物理の成績が全然上がらない
やる気はあるんだけど物理の勉強法が分からない
物理を教えていると、上記のような生徒さんの声をよく聞きます。
物理の実力を確実に上げるポイントとして、次の3つの方法が考えられます。
- 教科書に出てくる公式の自力導出と他人への説明
- 良い問題に取り組み、問題丸ごと定着させる
- 計算や文字式だけに頼らず、言葉に変換して定着させる
では、今から細かくその内容について説明します。
1.教科書に出てくる公式の自力導出と他人への説明
高校物理で出てくる公式はそれほど多くありません。一つの大きい柱をおさえれば、枝葉の部分の公式は簡単に導出することができます。例えば、等加速度運動の3つの公式をしっかりおさえれば、鉛直投げ上げや斜方投射の公式は簡単に導くことができます。
ここで重要なことはこれらの公式を、友達や先生に見てもらい黒板やホワイトボードの前で発表形式で導出することです。
発表した後に友達や先生に今の説明で理解できたかを確認し、理解できていなかった場合不合格でやり直しです。この他人が理解できたかの基準がとても重要です。自分ではなく『他人がちゃんと理解できたか』の基準です。他の人に理解させるためには本質を正しく理解し、客観的に自分や他人が間違っていることのメタ的な修正が必要だからです。
下の画像は高校物理の電磁気で出てくる「オームの法則」や「ジュールの法則」の説明となる【金属電子論】について説明したものです。
これを一から説明し相手に理解させるのは大変かも知れません。15分で黒板やホワイトボードとあなたの巧みな話術で相手を理解させる努力をしてみてください。ここで大事なポイントがあります。それはたとえ失敗してもミッション達成ということです。それはどういうことなのでしょうか。
僕がこの教える系の仕事について間もない頃、4、5人の生徒さんの前でこの『金属電子論』について説明する機会がありました。十分予習して授業に臨んだつもりでしたが、生徒さんの視線やリアクションを気にしすぎてしまい、詰まったり質問に答えられなかったりでグダグダになってしまいました。
その時はかなり凹んだのですが、説明に詰まった部分ほど鮮明に覚えていて真剣に復習しました。後にはその部分の説明は他の部分よりうまくなっていたのです。これはエピソード記憶というそうです。個人が体験した日々の記憶は忘れにくく長期記憶として保存されます。自分が理解したことをアウトプットするのは難しいですが、その分学習効果が何倍も高くなるんですね。
このような公式がたくさん埋もれている物理の単元には、他に『気体分子運動論」があります。生徒さん同士で覚えた公式の発表会を行うのもいい方法ではないでしょうか。
2.良い問題に取り組み、問題ごと定着させる
公式に数値を代入して計算するだけのクソ問題でなく、練られた良問にじっくり取り組むことです。これはその単元を習ってセミナー物理のような教科傍用問題集を一周してから行ってほしい勉強法です。
皆さんは河合塾出版が出している『良問の風』という物理の問題集をご存じでしょうか。良問の風はベストセラー商品で、大学入試で頻出かつ身につけるとためになる問題、いわゆる良問が各単元で絶妙に選ばれています。僕らもこの問題集をよく使います。これをまず一冊買って通すのも良い勉強法です。
更に一歩踏み込んで差をつけたい受験生は、絶妙なタイミングで単元ごとに入試問題の良問をやり込むことが実力アップの近道です。例えば『二体問題における重心の位置保存』をマスターしたい時は、2010年京都大前期物理の第一問(力学)に取り組むべきです。教える側は、各受験生にジャストタイミングで適する入試問題をオーダーメイドで提供していくことが大切です。
3.計算や文字式だけに頼らず、言葉に変換して定着させる
物理と国語は非常に相性のいい教科だと思います。この2教科は相補的な関係にあるからです。
例えば皆さんは運動の3法則を説明できますか?現場で教えているとこれを説明できない受験生が意外に多いんです!これで物理が苦手とか嫌いって言ってるんです。もったいない。ちなみに3法則は
- 第一法則:運動の法則
- 第二法則:運動の法則
- 第三法則:作用・反作用の法則
物理はセンスや才能がいると思ってる人がいますが、実はそうではありません。物理が分からないと言ってる人の多くは実は定義が分かっていなかったり、現象や事象を言葉に変換していないから忘れたりしているだけなのです。
力学的エネルギーが保存されない場合成り立つ関係式の
(非保存力がする仕事)=(力学的エネルギーの変化)
も『保存力』『非保存力』などの言葉を確実にするだけでも理解が深まるし、記憶として深く定着します。
物理は図やグラフ、数式で簡単な分、言葉で補充する必要があると思います。
まとめ
いかがでしたか?今日からできることばかりなのですぐに行動に移してほしいです。
最後にもう一度、物理の実力を上げる3つの方法は
- 教科書に出てくる公式の自力導出と他人への説明
- 良い問題に取り組み問題丸ごと定着させる
- 計算や文字式だけに頼らず言葉に変換して定着させる
です。
先生が情熱だけで一方的に、あるいは生徒が板書写しなどただひたすら受身に学習するのはオワコンです。先生と生徒がより良い新しい形を模索して勉強に取り組めば物理嫌いがなくなり、再び日本人からメジャーで活躍するようなノーベル賞級の物理学者が誕生するかもしれません。
コメント