全体の分析
試験時間60分 設問数25問
理論から1問、無機1問、有機2問の構成。論述問題が出題されなかった。「理論分解電圧」が出題された。第3問(難)と第4問(易)は、難易度にかなり差があった。解く順番を工夫して時間に余裕を持ち、精神的に安定した状態でベストパフォーマンスを発揮しよう。
大問の分析
第1問 電気分解と理論分解電圧
電気分解の各電極の反応は物質が6個もあり意外と時間がかかる。
参考1に載せた電気分解の規則に従って、手際よく反応式を書こう。
本文にも書かれているようにAgClは沈殿で、イオンの数はゼロと考えるから電気分解は起こらない。これに引っかかり失点した生徒もいたのではないかと考えられる。
理論分解電圧とは『電気分解が起こるのに必要な最小の電圧』のことで高校化学であまり耳にしない。単体が発生•析出しやすいほど理論分解電圧は低い。
第2問 金属イオンの系統分離、溶解度積、結晶格子
溶解度積とは簡単に言えば『ほとんど溶けない塩のレアな陽イオンと陰イオンの積』のことである。問1は溶解度積の意味を考えれば、解いたことがなくてもこの問題は解ける。金属イオンの系統分離において、第ニ属は酸性条件下で硫化物沈澱を含む物質として銅イオンが問われやすい。しかし本問では硫化カドミウム(黄色)が沈澱する。迷った生徒も多いはずである。新課程ではカドミウムのような12属元素も遷移元素に含めるようで、このことが意識されての出題ではないかと考えられる。
第3問 環状エステルの構造決定
4題の中で一番難しい。問1の『元素の確認法』はまず確実に得点したい。
- Aの分子式から不飽和度を求める。
- Aは不斉炭素原子を有する五員環の化合物である。
- Aをオゾン分解するとギ酸が得られる。
- Aは臭素と付加反応することから炭素間二重結合をもつ。
- Aは酸性条件で加水分解されることからエステルである。
五員環化合物Aの構造を本文中の上記の情報を基に決定していくわけだが、途中のエステルの加水分解においてケト・エノール平衡を考えなければならないし、アルケンのオゾン分解の知識も必要で見た目より相当解きにくい。問6では炭素間二重結合をもつ環状化合物への臭素付加に対して、立体化学の知識が問われている。
第4問 天然有機高分子化合物
4題の中で一番典型的で簡単な問題である。真っ先にこれを解いて残り3問を解く時間を確保しよう。
文章の穴埋めでは『デンプンとセルロース』に関する知識が問われた。
計算もアルコール発酵に関する単純なもので複雑ではない。プラスチックのリサイクル手法については重箱の隅を突かれたように感じる受験生もいたのではないか。
学習対策
教科書の本文を理解しセミナー化学やリードαで各論を定着させた後、重要問題集で入試の実力を総合的に養成する。サイエンスビュー化学総合資料集で視覚的に化学を掴むのも有効である。
遅くとも9月頃から過去問演習を始め、自分の弱点と向き合い克服し傾向を掴もう。本番で実力を発揮するために常日頃から素早く正確に解く練習を。二次試験の難易度から考えて、共通テスト対策と二次試験対策が被るので効率良く学習を進めていくことができる。すなわち共通テスト対策で難解なレベルまで学習を積んでいれば、二次試験での高得点につながる。共通テスト後は論述問題対策も十分行おう。
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